更新日2021.07.07 カテゴリー 耐震補強工事について
東京都練馬区にある分譲マンションの耐震化の事例をご紹介します。弊社は補強設計、設計監理として携わりました。同時に大規模改修を行って高級感のあるデザインに生まれ変わりました。耐震補強には、外付けフレーム耐震補強工法とスリット補強を用いています。
旧耐震基準で建てられた、築50年の分譲マンション
ご紹介するのは、こちらの物件の耐震補強工事の事例です。
物件名:石神井公園マンション
所在地:東京都練馬区
用途:分譲マンション
建築年:昭和46年(築50年)
構造:RC造(64戸)、地上7階
こちらのマンションは、2016年に耐震診断を終えており、新耐震基準を満たしていなかったので耐震補強が必要でした。
しかし、実現困難として一年近く膠着状態となっていました。
耐震診断を行った耐震総合安全機構(JASO)の構造担当さんや認定工法の業者さんより、建物南側(ベランダ側)の補強になるだろうとの意見があり、工事中の生活や、工事後の採光に影響が大きいという懸念が拭えなかったからです。
外付けフレームを採用
弊社にご相談いただき、2018年12月より補強設計を開始。
建物北側(通路・玄関側)への外付けフレーム補強とスリット補強をご提案しました。
外付けフレームは、建物の外側地面に杭を打ち、RCフレームの柱を立ててそれと建物を接合する方法です。
スリット補強は、柱と壁を部分的に切り離し、建物に粘りを出す方法です。
建物側面に、このように柱を立てることとなりました。
設計が完了したのが、2019年2月です。
2020年3月、耐震補強工事を開始
建物横にここまで巨大な柱を立てる場合、杭が地盤にしっかり入っている必要があります。
練馬区の立ち会いのもと、試験杭を打ち込んで地中の支持層への到達を確認。
外付けフレームは、茨城県の工場にて作られました。
現場に運ぶ前に、工場に出向いて品質の確認作業を行っています。
施工会社任せ、メーカー任せではなく、このように逐一確認作業を行い、求められる強度が担保されるようにしています。
地下の基礎と、基礎をつなぐ梁にアンカーを打ち込み、鉄筋を配筋します。
アンカーも引張試験を行い、強度をチェックしながら工事を行います。
2020年7月~、外付けフレームの組み立て
アンカーを打ち込み、鉄筋を作り、コンクリートを流し入れるための型を作ります。
いよいよコンクリートを流し込んだのが2020年7月。
この建物は敷地が狭いので、建機を入れると道路までギリギリでしたが、無事に行うことができました。
建物側の準備が終わったら、外付けフレームを運び込み、組み立てていきます。
ここでも練馬区の担当者がいらしています。
検査会や見学会などで、工事期間に合計6回以上はお越しになっています。
このように、耐震工事は行政のチェックの元に間違いがないよう丁寧に行われています。
同時に大規模改修を行いました
耐震改修工事と平行して、大規模改修も行われました。
耐震補強工事はマンション建築時には想定されていませんから、多くの場合、修繕積み立てだけでは予算が足りません。こちらのマンションでは、住宅金融支援機構の融資制度をうまく利用し、管理組合で一時金を集めて返済計画が成立しました。
意匠は、株式会社モリモトアトリエさんが担当されています。
同じ費用をかけるのであればイメージを一新するデザインにしたいと、何パターンも色彩計画を作成してくださいました。
最大のポイントは、錆が出て劣化が進んでいた廊下側のスチール手すりの交換です。
プライバシーに配慮し、玄関ドアを開けても中が見えない網入り磨りガラスとアルミの手すりが採用されました。
スチール手すりより導入コストは高いですが、5年に一回の再塗装が不要になり、メンテナンスコストが下がるのがメリットです。
意外と、修繕計画には余分なものが含まれていることがあります。
大規模修繕の際に修繕計画の見直しをすると、今後のビジョンを作りやすくなります。
玄関ドアは、シックな色合いの耐震ドアに交換されました。
エレベーター機械室までのスチールドア、給水ポンプ室や管理人室のドアも、すべて耐震ドアになりました。耐震ドアは、地震後の閉じ込めを防ぐドアです。大地震後の対応を考えると、住戸だけではなく共有部のドアも開閉が重要になると考えての選択でした。
廊下は滑りにくい木目調シートに、外階段は全体のイメージに合わせたダークブラウンになりました。
外付けフレームはシンプルなデザインなので、違和感がないだけではなく相乗効果でモダンなイメージを作ってくれます。これは、耐震補強と大規模修繕を一緒にやるメリットでもあります。
廊下やエントランスなど、共有部の修繕、リフォームも同時に行われ、雰囲気が明るくなりました。
照明も交換されています。床や壁は、照明効果を踏まえた色が選ばれました。
見た目も機能性もグレードアップし、マンションの資産価値が上がる改修になったのではないでしょうか。
2020年11月末、工事完了
3月に着工し、完了が11月でした。
建物の廊下側の工事のため、住民の方には長い間、出入りの際にご不便をおかけしましたが、ベランダ側ではないので工事後にお部屋の採光にあまり影響が出ないのはメリットでした。
最後に、ご協力くださった管理組合の皆さま、住民の皆さま、素敵に仕上げてくださったモリモトアトリエの皆さまに、深く感謝いたします。
予算オーバーで工事に踏み切れなかったマンションの解決ケースでは、
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