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鉄骨造の耐震診断は断られるケースがあります。どうしたらいい?

更新日2019.10.17 カテゴリー オーナー様向けコラム

鉄骨造の耐震診断は断られるケースがあります。どうしたらいい?

耐震診断を依頼したのに断られたというお客様から相談をいただくことがあります。聞いてみると、鉄骨造建物の方が多いです。鉄骨造建物が耐震診断を断られる理由は、構造計算に技術が必要で面倒だからです。逆に言えば、鉄骨造の耐震診断を断らない会社は技術があって良心的と言えます。

鉄骨造建物の耐震診断が面倒な理由

耐震診断には構造計算が欠かせません。構造計算とは、建物の強さを科学的に導き出して数値化することです。建物全体の荷重や、階層ごとの強度、平面的な強度のバランス、地震の時の揺れ方などから、Is値(建物の耐震性能)がわかります。

耐震診断とは、現地調査で設計図面通りの建築方法になっているか、建築部材の老朽化、溶接のエラーがないかなどを調べ、それらの情報と図面を突き合わせて構造計算を行う一連の作業を指します。

構造計算は、昔は手で行っていたので膨大な時間を費やしていました。現在は構造計算ソフトを使うのが一般的で、計算が簡単になり時間も短縮されました。ただし、誰でも扱えるわけではなく専門知識が必要で、建物の複雑さによっては一貫計算できないものがあります。構造計算ソフトも万能ではありません。

また、鉄骨造(S造)は年代や建築会社によって形式に大きな違いがあり、現在では使われていない材料や工法も数多くあります。
それらさまざまな形式の鉄骨と、劣化の度合い、施工不良の度合いの組み合わせは無数。対応できないパターンが出てきます。
そのため、十分な経験を持つ技術者が、実際の現場を見て評価し、個別の手計算により数値化する必要があるのです。

プロ用の構造ソフトは1本100万円~200万円と高額な上、メンテナンス費やサポート費が10万円単位で毎年かかり続けます。
そのため、大きな事務所でもあれこれと買い揃えているわけではありません。耐震診断を引き受けたものの、後から手計算でしか無理だということがわかると面倒なので、それなら最初から鉄骨造の建物は断ってしまおう、という事務所があるのです。

構造計算自体が不得手な建築士もいます

建築士(※)がみな同じように手計算で構造計算ができるかというと、そうではありません。
建築士にも、構造、意匠、設備など得意な分野があり、構造計算は苦手という建築士もいます。

一級建築士も二級建築士も試験は学科と製図がありますが、学科試験の方法は異なります。
一級建築士の学科試験は、「計画、環境・設備、法規、構造、施工」の5つにわかれており、それぞれで合格点を取らないと合格できません。また、この中でもっとも重視されているのが法規と構造です。この二学科は配点が高いので、これだけで1/3の点を取らないと合格できません。
一方、二級建築士の学科は25問中13問正解でパスできます。そのうち、構造計算に関する問題は6問です(ここ数年の試験では)。構造計算を全問落としたとしても、残り19問が正解なら学科は合格できます。

一級建築士の場合は構造の試験をパスしていることが明確ですが、二級建築士の場合はちょっと不安になりますね。構造の学科は建築士試験で一番難しいところなので、構造はある程度切り捨てて合格を狙う!という試験対策をする人もいます。
一級建築士が少ない、多忙という事務所ではそもそも鉄骨造の構造計算ができる人員がいない場合もあります。

※耐震診断を行えるのは、登録資格者講習を修了した一級建築士、二級建築士、木造建築士です。木造建築士は木造建築に特化した建築士です。延べ面積300㎡以下、2階建て以下の建物のみ、設計や工事監理ができます。マンションなど大きな建物の耐震診断は、木造建築士は行いません。

鉄骨造の耐震性は、溶接の仕方に大きく左右される

鉄骨造の建物の中には、新耐震基準で建てられているにも関わらず十分な耐震性がないものがあります。鉄骨造は、溶接の仕方一つで強度が大幅に変わってしまうためです。
設計図には溶接方法まで示されます。その通りに施工されていれば問題ありません。しかし、建設当時にその施工をできる施工者がいなかったり施工者が経験不足だったりすると、本来の耐震性が出せていない場合があるのです。
建物の鉄骨の接合には、高力ボルトと溶接が使い分けられます。高力ボルトの接合には職人による差がそれほど出ませんが、溶接は施工者によるクオリティの違いがあります。

溶接による強度の違いは現地調査で実際に鉄骨を目にしなければわかりませんし、経験が求められます。

鉄骨造建物の耐震診断を断られた場合は?

弊社にご相談ください。鉄骨造だからと言って耐震診断をお断りすることはありません。
図面だけではわからない現地調査を得意としており、鉄骨造建物の耐震診断、耐震補強設計実績が多くあります。
→こちらの記事も同時に読まれています「マンション耐震化の基礎知識:Is値とは

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