マンションの耐震工事に必要な住民の同意は

更新日2019.04.03　カテゴリー　オーナー様向けコラム

分譲マンションの工事をする場合は、区分所有者の同意が必要なことはご存じの通りです。建て替え、外壁の改修、エレベーターの取り替えなど、内容によって必要な決議は異なります。それでは、耐震改修工事の場合はどのような決議なのでしょうか。必要な同意の割合について解説します。

耐震改修工事は、普通決議？特別決議？

マンション全体に関わることを決定する際には、マンション管理組合総会で挙げられた議案に対して、区分所有者が承認するかどうかを決めます。この採決のことを「決議」と言います。
決議方法には、「普通決議」と「特別決議」の二種類あり、それぞれ成立要件が異なります。
これらは、マンション管理組合の規約だけでなく「建物の区分所有に関する法律」という法律で決められています。
○区分所有法

特別決議は、区分所有者の3/4の同意で決まる

特別決議は、以下の議案についての決議をする方法です。
特に重要な項目については、より多くの区分所有者の同意が必要になっています。

・管理規約の設定、変更、廃止
・管理組合法人の設立や解散
・共有部分の形や機能の変更
・大規模滅失による建物の復旧
・建物の建て替え
・専有部分の使用禁止の請求
・区分所有権の競売の請求
・義務違反の占有者に対する契約解除と引き渡し請求

普通決議は、区分所有者の1/2以上の同意で決まる

普通決議は、特別決議で決めること以外の議題を決議します。例えば、次のようなものです。

・管理会社の変更
・理事、監事の選任や解任
・収支決算報告と事業報告の承認
・予算と事業計画の承認
・管理業務の委託契約などの更新や変更
・管理費などの金額の決定

出席者の数にも規定がある

決議には、定足数の決まりもあります。そうでないと、欠席裁判になってしまうからです。
普通決議は、区分所有者の1/2が出席が必要。
特別決議は、区分所有者の3/4の出席が必要。

耐震改修工事の決議要件は、工事の内容による

区分所有者の1/2の同意か3/4の同意かでは、かなりハードルの高さが変わってきます。それでは、耐震改修工事はどちらの決議になるかというと、工事の場所と変更具合によって変わります。
区分所有法によれば、次のようにあります。

第十七条　共用部分の変更（その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。）は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。

「形状や機能が著しく変わるかどうか」がポイントです。
例えば、耐震改修工事には、地下駐車場の柱にシートを巻き付けて補強する「柱巻き」という工事があります。
この工事だけなら、駐車場の広さもほとんど変わりませんし、見た目も元に戻るので、普通決議（区分所有者の1/2の同意が必要）でかまいません。
エントランスに耐震壁を入れるような工事の場合は、見た目も動線が変わってしまうので、特別決議（区分所有者の3/4の同意が必要）が必要です。

「著しく」という言葉が抽象的なので、どちらかわからない場合もあると思います。
その場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。

※上記の例は、一般的な管理規約を元にご紹介しました。実際には、組合ごとに管理規約が異なるため、共有部分の変更について特別決議とするか普通決議とするかは、各管理規約をご確認下さい。

要耐震改修認定建築物の場合は、過半数の同意で議決できる

裏ワザ的なのですが、自治体から「耐震化計画」を認定してもらうと、大規模改修の場合の決議要件が3/4から1/2に緩和されます。これは、耐震改修促進法で定められています。

東京都の場合は、建築企画課耐震推進担当に事前相談をし、内部検討委員会で話し合われたあと、専門機関による評定を受け、区役所で認定申請、という流れです（各自治体ごとに確認して下さい）。

本来は、区分所有者全員が納得の上で工事をするのが理想ですので、過半数のGOサインで工事着工するのは思わしくありません。

住戸に補強部材がある場合は、住戸内に入っての工事も必要になります。住民の同意なしには、施工が難航するでしょう。
耐震改修工事は、一カ所でも未施工のまま残ってしまうと計画上の耐震性が得られません。
できるだけ多くの方の合意が得られるように、周知活動やアンケートなどを繰り返していきましょう。

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